筑波大学アリーナ計画と指定大学法人
※ その後2021年2月2日に日刊建設工業新聞に、アリーナ計画断念の記事が出ました。
2020年10月6日に指定大学法人に指定された筑波大学ですが、指定された後からいろいろな動きがあるように思われます。
その1つがつくば市吾妻の元大学職員宿舎に建設が予定されているアリーナです。
この計画はご存知の方が多いと思いますが、2017年に突如として計画が持ち上がり、当初は結構な熱量で動き出しました。当該宿舎に住む職員を退去させ、使用していなかった他の宿舎(リフォーム)に移動させました。
しかしながら当時は「土地を貸して上モノを外部事業者に建築してもらう」計画(筑波大学附属病院が前例)だったものの、コンサルタント会社の結果が芳しくなかったようで(結果自体は非公表)、事業としての採算が取れないとの判断で凍結されていた計画です。
ここに来て、計画が再始動した理由として大きく分けて3点あると思います(推測を含みます)。
①アリーナ計画を強力に推進していた永田学長がいろいろありながらも再選されたこと
②大学債の発行要件が緩和されたこと
(指定大学法人指定で資金調達がしやすくなった)
(民間に建設してもらわず自前で建設する方向に転換した)
③市内各地の廃止した大学職員宿舎跡地の売却による資金が得られること
これらがセットで成立しているのではないかと思います。
まず①は本題から外れますので深入りしませんが、別の候補者はアリーナ計画に対して批判的だったとの情報もあり、学長が変わった場合には計画はお蔵入りしていたでしょう。
②については、東京大学で大学債200億円を発行したことがニュースとなりましたが、資金調達がしやすくなり、(ある意味で採算性を無視して)自前で建てられるようになったとも言えます。
③は今回調べてわかったのですが、国立大学法人が保有する土地を売却する場合には、売上の半分を施設整備の資金としてつかえるようです。
”各国立大学法人等が土地を譲渡した場合には、その譲渡により生じた収入のうち「文部科
学大臣が定める基準」により算定した額(別ページによれば半額)を、独立行政法人国立大学財務・経営センターに納
付した上で、その残存額を活用した施設整備等を行うことが可能となっている。”
既に空き家となって数年放置されていた大学職員宿舎が、ここに来て急速に売却の動きが出てきている背景には、アリーナ計画があるのではないでしょうか。
筑波大学が既に廃止、今後廃止する宿舎は下記の図(筑波大学施設課HPより)の通りであり、⑦は既に売却済みですが、今後売却価格の高い吾妻・竹園の宿舎が10億円単位での売却になると考えられ、筑波大学が得る金額が約半分だとしてもそれなりの資金調達ができると考えられます。
筑波大学職員宿舎も元は国有財産であり、大学だけはその売却益を利用できるというのは、どこかおかしいようにも思います(法人の自助努力で得た資産ではありません)。
他省庁の宿舎の場合には廃止後財務省が国有財産として売却しますので、各省庁・研究所の歳入にはなりません。元が同じ”国民の財産”の取り扱いとしては合理的と言い難いのではないでしょうか。
まだ事業計画等の詳細は明らかにはなっていませんが、”2017年時点で民間が不採算”と考えた事業を行う以上は、”学問であれば採算度外視”という発想は持たずに、慎重な経営判断をしてほしいと思います。
アリーナ用地の東側は、市によって財務局の売却スケジュールが保留されており、今後の動向が気になるところです。
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